第7章 自由の才能
「彼氏の応援ですか?」
「……まぁそんなとこ、です。」
蝶野くんは私の隣の椅子に座った。
この間のこと怒ってる、よね……気まずい。
「僕は吹奏楽部の雑用です。親友に頼まれて。」
「……そー、なんだ。」
「蜂楽(アイツ)、ヤバいですね。」
「うん。ひとりでドリブルずば抜けてるね。」
「まぁ、それもですけど。」
蝶野くんは、いつもピシッと締めてる制服のネクタイを少し緩めた。
「蜜浦先輩への気持ちが、です。」
蜂楽の、私への気持ち。
恋愛経験ゼロの私だって……
“もしかして”とは、思ってた。
蜂楽の態度はとっても素直だから。
でも、はっきり“好き”と言われたわけじゃない。
単に、誰かに甘えたくて?
単に、誰にでもキスできちゃう子で?
私のこの“もしかして”を否定する理由付けを
知らず知らずのうちに、自ら構築してしまう。
「僕、あれからよく冷静に考えたんです。
もし僕が先輩の恋人だとして、他のヤツから守りたい場面があったとして。
その時、あんなことができるのか?って。」
あんなこと、って……キスのこと、だよね。
思い出しただけで、顔が熱くなってくる。
「僕は、自分でも残念なくらい冷徹ですから。
すぐにリスクとか、後先考えてしまうんです。
父が、弁護士なもんで。」