第7章 自由の才能
競技場のスタンド席では、ウチの学校の吹奏楽部とチア部がすでに応援を始めていた。
その集団から少し離れた椅子に、私は座った。
キックオフ前、蜂楽のスマホに、
『応援来たよ。楽しんできてね!』
とメッセージを送った。
「(あ……蜂楽、来た!)」
ピッチに立った蜂楽は、なんだか違う人に見えた。
部活の練習も観に行ったことがないから、男子の集団の中にいるのが新鮮に見えたのかも。
蜂楽は他と比べて、テクニックが抜きん出ていた。
素人目にもはっきり判った。
「(すごい、すごい!また抜いた!)」
ボールを追いかけられる脚の速さ。
体をしなやかに自在に操るセンス。
敵チームを華麗にかわす、繊細なのに大胆な技。
蜂楽がボールを持っている時にだけ…
ワクワクとドキドキが溢れ出す……!
「(ヤバい……こんなにかっこいいなんて。)」
フィールド上の蜂楽が、大きく見える。
蜂楽はちゃんと男子で…私は女子…。
サッカーに取り組む蜂楽に、異性をやたら意識してしまう。
「蜜浦先輩?」
夢中で観戦していたら、後ろから声を掛けられた。
先日“見せつけ”てしまった蝶野くんだった。