第1章 おねがい
「あ、力仕事とかない!?俺ね、こう見えて運動部なんだ♪」
パイプ椅子からガタッと勢い良く立ち上がって、ふざけてマッチョポーズを取る。
立った姿を初めて見て、意外な背の大きさに正直驚いた。
そりゃ男子だし運動部らしいし、これくらいでしょ…って思う反面。
やっぱり可愛い系の顔立ちや子供っぽい言葉遣いのせいで、意外性を感じてしまう。
「何かあるっしょ?荷物運びとか、お遣いとか!」
初対面の私に、なんでここまで……?
……でも、私の方も……
“背に腹は代えられない”ことがある。
「……蜂楽くん。」
「はいよっ♪」
この人に賭けてみることにした。
いつもの私なら、こんな博打絶対しないのに。
「……私の……」
───なんでだろ?
なぜだか、あなたなら……
私を理解ってくれそうな気がしたから───。
「……私の、恋人になってくれる?」
この選択が、私の運命を大きく変えることになる。
開いた窓から暖かい春風が吹き込んできて、
彼の癖っ毛をなびかせた。
これが追い風になるか、向かい風になるか。
まだ誰にも判らない───。