第39章 番外編Ⅲ エゴイスト日和 ✢
「いっぱい遊べたね、楽しかったー!!千葉愛♪」
夜7時、人の往来が少ない場所からふたりで景色を眺める。
対岸のライトアップが水面に映って幻想的。
一緒に過ごす時間が終わりに近付いて切ない気持ちを、この儚い光が加速させる。
「また一緒に……来れるかな?」
「来るに決まってらぁ。なんか今日の夢、ネガオーラ出てない?」
「今、葛藤と闘ってる。」
「?」
ノリで買った派手なサングラスを頭に掛けてる。
長めの前髪を留めた黄色いヘアピンがズレてる。
どこでもいいから廻に触れたくて、ヘアピンを直すついでに前髪と額を触った。
「今日もファンの人からいっぱい声、掛けられてた。
それに廻は明日……“青い監獄”に戻っちゃう。」
決別したはずの弱さを、これ以上隠せそうもない。
どんどん人気者になる廻に、嫉妬する自分。
再招集でまた離れ離れなのが、怖い自分。
こっち見て!って騒ぐ子供と、何ひとつ変わらない。
「弱い自分が……ほとほと嫌になる。」
柵上に置いた腕に、顔を突っ伏す。
身も心も、温度も色も……
明日からまた二分の一だ。
「自分の弱さを理解ってる夢は、強い子だよ。」
めんどくさい私の頭をポンポン撫でてくれる、
大きく温かい手。
その優しさが……痛いよ。
「夢はもう弱虫じゃない。心の強いエゴイストっしょ?」
バカ言わないで。
“青い監獄”で厳しい戦いを勝ち上がったあなたと
同じエゴイストなんて呼び方…
「直感、即興♪自分勝手にエゴ散らかせばいい。
触角を撃退した時みたいに。大人をシカトして自分の道を行くって決めた時みたいに。
これエゴイストの極意なり♪」