第39章 番外編Ⅲ エゴイスト日和 ✢
「(イチゴ……食べられた。)」
胸元に結ばれた“お月様”を触って
廻にとっての“夢”という存在を確かめる。
私は廻のものなのに、廻は私のものなのに。
こんなにもあなたの心に縛り付けられてもまだ……
ヤキモチなんかに負ける、弱い私がいる───。
「蜂楽選手、サイン貰えますか?この子ファンで!」
「サイン!?うわちゃー、まだ考えてないやー。」
あのあと何時間か経ち、声を掛けてきたファミリー。
小学生の男の子は、憧憬の眼差しで廻を見る。
世間からの注目度は“青い監獄”の偉業を示してる。
廻がサッカーで活躍するのは嬉しいのに。
私だけの恋人にしておきたい……独占欲。
「ねぇ、夢。サインどうしたらいいかな?一緒に考えてよ。」
「え?なんで私に振るの?」
「だってロゴデザイナーになるんでしょ?そういうの好きじゃん♪」
だからそうやって、私に上手く構わないで。
頼られて飛び上がるほど嬉しいのが……
悔しくて仕方ないんだから。
「……簡単なイラストでも入れたら?」
「にひっ♪いいね!名前はひらがなが良いな。」
「廻っぽい。ガキンチョ感。」
「ガキンチョは夢もでしょ?こないだ“ヘンダーランド”観て大爆笑してたじゃん。」
「お互い様。廻の推し映画だから観ただけ。」
少年のお母さんに渡されたペンとデズニィーのパンフをふたりで持って、喋りながらたどたどしく繋ぐ線。
平仮名の“ばちらめぐる”と
一筆書きで出現した“蜂(トレードマーク)”。
共同作業で爆誕した、即興の産物だった。