第39章 番外編Ⅲ エゴイスト日和 ✢
“俺、夢ちゃんとデズニィーも行きたいにゃ♪
絶対楽しいやつじゃん!”
原宿での言葉……ちゃんと覚えててくれたんだ。
「廻、すっごく嬉しいっ…!楽しみだね…!!」
予期せぬ誘いに、テンションが上がる。
今の今までモヤモヤしてたのに、もう既に嬉しい。
今まで色々なことを我慢する生活だった。
だから自分が、こんなに気分屋だったなんて知らなかった。
「うん、夢の卒業遠足だね♪あ、卒業式の日は学校行くからね。夢の晴れ舞台だもん!」
「でも廻、有名人になったから…。一緒にいられるといいんだけど…。」
「逢いに行くに決まってるでしょ?何があっても。」
“元”生徒会長である私の、文字通り最後の仕事。
卒業生代表の答辞を読むこと。
廻が来てくれるなら…って、頑張れる気がしてくる。
「ありがと!卒業式の後、生徒会室で待ってるね。」
「うん!」
私って単純だな。
廻の言葉ひとつで、こんなにも感情が揺れる。
“太陽”みたいな無敵の輝きを放つあなたには……
これからも到底、敵わない。
「あ、さっきメール来てさ。来週“青い監獄”に再招集されるんだ。その前にたくさん遊ぼ♪」
「……そう、なんだ。」
不意打ちで来る、その瞬間。
休暇(オフ)は二週間だと、もともと聞いていた。
でも“再招集(そのことば)”を聞くと……
また心臓が……ぐらつく。
黙って背後から私を抱き締める逞しい腕。
筋肉の筋が出た前腕を指先と唇で触れて、目下のシンクに置かれた洗いかけの食器に視線を落とした。
「……たくさん楽しもうね。」
「うん…♪」
今夜はこのまま……何も言わずに抱いて欲しい。
───まだ訪れてもいない寂しさを
心に穴が空く前から埋めたくて───
振り返って口付けて、今夜の営みを急かした。