第39章 番外編Ⅲ エゴイスト日和 ✢
「いってきまーす♪」
「いってらっしゃい!楽しんでおいで!」
「うん!」
玄関で靴を履く廻を見送る優さん。
今日は“青い監獄”の人達と、渋谷で待ち合わせているらしい。
「ホントに来ないのー?夢。」
優さんがアトリエに戻った後、私を見るクリっとした蜂蜜色の眼。
普段はこうやってあどけない顔で油断させるもんだから、夜とのギャップには本気で参る。
「私がいると皆に気遣わせちゃう。それにバイトだって言ったでしょ?」
「俺、こーやってともだちと遊ぶの初めて。超楽しみだから、夢がいるともっと楽しいかなって♪」
「ありがと。気持ちは嬉しい。でも初めてなら尚更、男子同士で楽しく遊んでおいで?」
「わかった。んなら夢とのノロケ、アホ程してくる。」
「あっはは、恥ずかしいなぁ。むしろ皆の聞いてきてよー。」
「お!それもいいね、バッチリ承知♪夢が知りたがってたって言っとくね!」
「えぇ、なんでよ…!まぁいいけど。いっぱい楽しんできてね!」
「うんっ!」
お気に入りのオーバーオールを着た廻が駅に向かって歩く背中を、小さくなるまで見つめていた。
本当に“ともだち”ができて良かったね。
もう廻のサッカーを否定する人なんていない。
彼らとはサッカーの楽しさを分かち合えて、高め合える関係。
ちょっと妬けちゃうくらいの、最高の“ともだち”。
バイトの休憩中、バックヤードで鳴ったスマホを確認すると、廻から送られてきた写真だった。
“青い監獄”の人達とダーツや卓球、ボウリングして楽しそうに遊んでる。
微笑ましくて、思わず笑ってしまった。
ちょうどそこに、おすすめ記事の通知が届く。
どこかの誰かがSNSに上げた“青い監獄”に関する投稿だった。