第39章 番外編Ⅲ エゴイスト日和 ✢
翌日の学校は“青い監獄”の話で持ちきりだった。
同じ学校に話題沸騰の試合の当事者がいるんだもん…当然だ。
「彼氏くん、最後の惜しかったね!!糸師冴くんと知り合いかどうか判る!?」
「ごめん…知り合いかどうかは…。」
「蜂楽くんのサイン頼んでもいい!?私、ファンになっちゃった!!」
「あはは。うん…帰ってきたら頼んでみるね…。」
帰ってくるかなんて、私にだって判らないってば。
それに、廻が学校でキャーキャー言われるのは前にもあったじゃん。
なのにまたモヤモヤしちゃってる、幼稚な私が嫌だ。
その日の昼休み、私はスマホを落としそうになった。
原因は、一通のメッセージと
バスの中で撮られた何枚もの写真。
“夢♡久しぶり♡なんと今、JFUに向かってるよ!
二週間のオフだって!
みてみて!ともだちいっぱいできたんだ♪”
三ヶ月間、待ち焦がれた
世界一かっこいい彼氏からだった───。
一緒に送られてきた画像には、昨日の試合に出ていた人も出てなかった人もたくさん写ってたけど……
見慣れた黄色の眼だけに、私は釘付けだった。
逸る気持ちをなんとか抑えて優さんに報告を送り、震える手でマスターに電話した。
「め、廻が…!廻が今日っ、帰ってくるんです…!あ、昨日の試合観ました!?えと、だから…!」
『おーい、落ち着け。わーったよ!特別だからな。今日も店、休んでいい。』
「あ、ありがとうございます!連日すいません…!」
『いーよ。こっちも今な“親父”が来てんだ。』
「……えっ!?お父さんが!?」
『時間が空いたんだと。なんか積もる話があるみてぇだし。お前は彼氏といてやれ。また病まれても困る。
じゃあな、切るぞ。』
お父さんとお兄ちゃん、昔みたいに戻れるよね。
ぶっきらぼうだけど、心の優しいお兄ちゃんなら絶対大丈夫。
暇が貰えた私は、すぐ廻に“迎えに行く”と返した。