第37章 番外編Ⅰ 意外なヤツ【潔視点】
「ーーっっ、廻のバカぁ…!!なんで飛び降りたのっ…!?ケガしたら…どうすんのっ…!?」
緊張感を破ったのは、彼女だった。
震える声で、蜂楽にガバっと抱き着く。
「大事な体で、ケンカなんかしないでっ…!」
全員の視線が、ふたりに集中する。
報道のカメラが、その姿を捉える。
その瞬間に交わされた───ふたりのキス。
「おかえり、廻。」
「ただいま、夢…♡」
コイツら……
周りなんて微塵も見えてねぇ……!!
「俺、この絵面デジャヴ。」
「あ、俺も。アレだ、招集された初日。」
「それだお嬢。このビル前で路チューしまくってた、イチャ散らかしバカップル。」
「蜂楽だったのかよ…。」
乙夜と千切が見たっていうカップルを俺は知らないけど……このふたりでファイナルアンサー。
「ヒュー♪見せつけてくれるじゃねぇの!キミのその度胸、ますます気に入った♡」
「あなた昨日の試合、U-20側でしたよね?」
「おひょ!俺のコト覚えててくれたの!うれぴっぴ♡でもこの通り“青い監獄”育ちなのよん?
スマホがコッチにあったから試合後合流して、ちゃっかりバス利用しちゃったお利口さん♪」
「そうなんですか…。廻がお世話になりました。」
蜂楽や士道と違って、感情を露わにしない表情。
遠目から一瞬見えた彼女の眼は……
俺の側にいつも居た“かいぶつ”みたいだった。
「でもこれ以上、廻を馬鹿にするなら私が相手です。
完膚なきまでに論破して心へし折りますから、覚悟して下さいね…?」
この人が……蜂楽の彼女。
確かに強えぇ───。