第37章 番外編Ⅰ 意外なヤツ【潔視点】
「蜂楽は彼女のこと、心配にならねーのか?」
湯船から出て、縁に腰を下ろした國神が話しだす。
「“青い監獄”きて、本気でサッカーやり合うのは熱いけど。スマホもねーしさ。
もしも彼女の心が離れちまったら…って、思う時あるか?」
心持ち、不安そうな表情。
配慮のできる國神は、普段そんな“私情”を見せない。
でも、確かにそうだよな。
謎だらけの合宿に招集されて、一ヶ月も音信不通。
俺に、もしそういう人がいたなら……
今みたいに思いっきりサッカーできてるか自信ない。
「ないよ?」
そんな國神に、蜂楽はバッサリと言い放った。
「俺は夢を絶対的に信頼してる。俺がサッカーに夢中でも、そんな俺のコト想って待っててくれる。
夢はすっげー強い子なんだ。國神のカノジョも、きっとそうでしょ?
どんな逆境にいても、俺は夢を愛してる。」
小っ恥ずかしい言葉を、当然のように使う蜂楽。
「このミサンガには、夢の夢が詰まってるんだ。夢がいつも俺の側にいるみたいで、寂しくないよ♪」
出逢って一ヶ月……初めて見た。
蜂楽って、こんなに大人びた顔するんだ───。
「ケッ!」
「まぁまぁ雷市…。にしても、まさか蜂楽がこんな話するなんて思わなかったよ。」
「潔にもできるといいね。心から愛し合える人が♪」
「え。お、おう…。」
「サンキュ蜂楽。なんか腑に落ちた。切り替える。」
「うん!良かったね、國神♪」
なんなんだよ、この妙な説得力と安定感は。
マジ年齢不詳かよ、コイツ……!!