第36章 蜂蜜の愛
「……やだ。やりたくない。」
「夢?」
クリスマスまでに帰ってくる?
お正月までに帰ってくる?
バレンタインまでに帰ってくる?
卒業式までに帰ってくる?
廻とやりたいことが、いっぱいあるのに。
移り変わってく季節が、一緒じゃないかもしれない。
問い合わせても答えてもらえない、合宿の期間。
正直すごく……不安なんだよ。
でも……ダメだ……強くならなきゃ。
今日は、笑って“いってらっしゃい”するって決めたから。
「廻が帰ってきたら、一緒にやる。」
一緒にやりたいことは、全部大切にとっておくから。
だから……早く帰ってきてよ。
じゃないと私は……私を見失ってしまう───。
「……いっぱい話、聞かせてよ。」
俯いた私の髪を撫でる、大きくて優しい手。
「毎日必ず連絡する。モチロン俺の話もする。」
溢れそうな涙を、下唇を噛んでぐっと堪えた。
あなたにこじ開けられた“哀”の感情。
今日だけは……いらない。
「だいじょーぶだよ。」
耳をかすめた柔らかい唇と、ありふれた魔法の言葉。
やっぱり廻は……切ないくらい、優しいね───。