第36章 蜂蜜の愛
11月20日は、今季一番の冷え込みだった。
蜂楽と出逢って初めてやって来た冬。
新しい季節は、少し切ない北風で始まった。
「キミにきめた♪」
「私このポケモン好き。サーナイト。」
「こいつ雰囲気が夢に似てるよね。エスパー、フェアリー。」
「え、そう?私、エスパーでもフェアリーでもないし。こんなに美しくないし。」
「“ほうようポケモン”ってのがさ♪ねーねー俺は?どのポケモンぽい?」
「やっぱ蜂のやつじゃない?」
「俺、エースバーンがいいな。“ストライカーポケモン”!」
「あははっ。もうっ、なんで聞いたのー。」
「にゃはは!合宿で“かえんボール”覚えてくるわ♪」
都内のJFUに行く電車の中、蜂楽がするゲームを見ながら他愛ない会話に花が咲く。
ゲームだって、蜂楽が教えてくれた楽しいこと。
午前だけ学校を休んで、付き添う私。
ふたりで制服を着て電車に乗ったのは実は初めて。
平日の、それも朝夕のラッシュ時でない、非日常感。
制服デート状態に……謎に今更ドキドキ。
「俺がいない間、ポケモン進めてていいよ♪」
なんの気なしに放たれる、無邪気な優しさ。
柔らかい声は棘になって……チクリと私の胸を刺す。