第5章 夢の続き
蜂楽のお母さんの絵は、蜂楽みたいだ。
不思議なくらい引き込まれて……
そのまま吸い込まれてしまいそうな
独特の存在感。
「……今日、廻くんと美術館に行って思い出したんです。
小さい頃の私は…デザイナーを夢見てたんだってことを。」
初めて口にした、タイムカプセルに入れた夢。
自ら記憶の奥底に埋めていた…
宝物みたいにキラキラした憧れを掘り出せた。
「夢ちゃん、すっごい真剣に絵観てたんだよね♪」
「そうだったの。」
本当は医学部なんて行きたくない。
今の私には、行ける気さえしない。
学力的にも、気持ち的にも。
「大人になっていくと、みんな小さい頃の夢や楽しさなんて忘れちゃう。」
蜂楽のお母さんの声は…
ゆったりとした優しいトーンで、耳が心地良い。
「よく思い出せたね。」
頭を撫でられれば、今まで我慢していた感情がブワッと溢れ出す。
物心ついた時から自分の母親には殆ど感じたことの無い“母性”を…
いま全身で受け止めた。