第30章 裏切り
「もしかして……蜂楽の家に挨拶に行くって、言い出したのは……」
私の居候先を、あぶり出すため?
私が引っ越すと知るやいなや、情報漏洩?
蜂楽や優さんに危害が加えられなかったのは
不幸中の幸いだったけど……
どう考えてもお母さんだって、その男と同罪でしょ?
「……」
「……最っ低。なんでそんな人と……。」
おののいて黙った母を、人間とは思えなかった。
気持ち悪い……もうここに、いたくない。
「とにかく。今、対応してもらってる警察にはこのことを伝える。そいつには、然るべき罰が与えられるからな。」
お父さん、さすがに警察に相談してたんだ。
「夢、今まですまなかった。
この件と仕事ばかりで、何も見えてなかった…。
去年のことで、お前からの信用も失ったと思ってた。
いつもひとりにさせて…本当に悪かった…!」
父は声を詰まらせた。
初めて聞く、人間味のある心からの叫びだ。
「……そうでもないよ。」
でも皮肉にも、尾行(これ)は……
私と蜂楽を、繋いでくれた。
絶対に誰にも秘密の……“恋人契約”。
「私には、何でも楽しませてくれる“恋人”がいる。
気に掛けてくれる明るい“お母さん”がいる。
優しく包みこんでくれる“お兄ちゃん”がいる。
みんなといたから、怖くてもだいじょーぶだった。
毎日、楽しく生きてられた……!!」
───お父さん、私ね……
心から愛せる“恋人”ができたんだよ。
もう、ひとりぼっちじゃ……ないんだよ───。
「離婚の件、承知した!!」