第30章 裏切り
「挙げ句、不倫なんて。妻としても母親としても…酷すぎる裏切りだよ。」
もうあなたのことを、母親だなんて思えない。
今日が最後のチャンスだから、言わせてもらう。
「……どの口が言う?アンタはどうなの、夢。」
「え……?」
母はワナワナと体を震わせた。
「あの彼氏と付き合うの認めてあげたの誰!?
あの家に居候して美大受験認めてあげたの誰!?
学校だって最近ずっと休んでるって、先生から電話があった!高校生の分際で、ただれた関係に足突っ込んでるんじゃないの!?
お母さん、知ってるのよ!?
毎日手なんて繋いで、道端でキスなんかしたり!!
この家であのコと体の関係も持ったんでしょ!?
去年のこと、全然反省してないじゃない…!!
もし妊娠なんてしたら……親子の縁切るからね!?」
子供みたいに逆ギレしてる。
母のヒステリックな声がリビングに響き渡る。
本当にどうしてしまったんだろう……この家は。
でも……そんな絶望の中で……
私は母の言葉に違和感を覚える。
なんで、どうして───
「なんで、毎日手繋いでるなんて……知ってるの?」
母を映す眼が、どんどん温度を失っていく。
「なんで、道端でキスしたなんて……知ってるの?」