第29章 おつきさま【蜂楽視点】
口に噛みついて出血させた時。
胸を力いっぱい握り潰した時。
シャツのボタンを千切った時。
首を思いっきり圧迫した時。
夢ちゃんが抱えてた“トラウマ”を知る俺が
蝉川とおんなじコトして快感を感じてた。
大阪で、半分だけ挿入れちゃった時もそうだ。
夢ちゃんは両親のコトで、妊娠には敏感になってたのに……
生ハメ(アレ)で、蝉川に心もカラダも傷付けられたのに……。
避妊のコトなんて、まーた頭から抜けてて……
強すぎる欲望に、脳内ジャックされてるカンジで。
やったコト自体は記憶があるのに……
不思議とその瞬間、頭の中は真っ白なんだ。
トんでる、っていうのかなこーゆーの。
「(あー……俺、クソザコじゃん。)」
夢ちゃんの部屋に入ると、いつものいいにおいがする。
洗剤と柔軟剤は俺ん家にあるおんなじの使ってるはずなのに、どうしてこんなにいいにおいがするのかな?
キレイに畳んで置いてある服を、手にとって広げる。
こんな小っちゃい服に、キミは入っちゃうんだね。
「……夢……」
声に出して名前を呼ぶと、千切れそうになる。
服に顔を押し付けて嗅ぐと、ムラムラする。