第29章 おつきさま【蜂楽視点】
「おかえり廻……どしたの?元気ないね。」
「大丈夫。ちょっと疲れただけー。」
ほっぺの腫れが大体引いてよかった。
優に心配かけたくないし、なにか聞かれて思い出したくもない。
「あれ。今日は夢ちゃん、一緒じゃないの?」
「……夢ちゃん、じぶん家に帰ったよ。しばらく帰らないかも。」
「なに、ケンカでもした?」
「んー、まぁ……そんなカンジ。」
「……そう。」
優は壁に掛けてあるカレンダーを見た。
たぶん今月末ある夢ちゃんの第一志望校の試験を気に掛けてた。
カレンダーには、“T大入試”って書いてある。
ホントにじぶん家に帰ったかなんて解んない。
どーせ“にーちゃん”と一緒なんだろうけど。
「……廻宛に手紙来てるよ。日本フットボール連合ってとこから。」
「え」
封筒を開けてみると、
“強化指定選手に選出されました。”
って紙が入ってた。
11月20日に都内にあるJFUに集合ってのとか、
そこへの行き方とか。
“日用品は支給するから持ち物は最低限に”ってのは書かれてたけど……
「やったじゃん。行っといでよ。」
肝心の、期間は書いてなかった。
「楽しくなってきた?」
「うん!」
夢ちゃん、俺は……
これでキミに、追いつけるかな───?