第29章 おつきさま【蜂楽視点】
「……わー。月、スゴい……」
───あれ、俺。
何時間ココに座ってたんだろ?
もう月が出る時間だ。
「……キレイ……」
そういや今朝テレビでやってた。
今夜は満月がでっかく見える、スーパームーンって。
夢ちゃんもどこかで、この月を見てるのかな?
初めて出逢った日から、俺は夢ちゃんのコトを
“太陽”みたいな人だと思ってた。
“……私の、恋人になってくれる?”
俺の心の全てを奪った瞬間。
ひとりぼっちだった俺を明るく照らして、闇から助けてくれた。
太陽は赤じゃなくて白色だ。
夢ちゃんは白だ。
だから“太陽”みたいなんだなって思ってた。
よくドラマとか歌でも言うし……
“キミはボクの太陽だよ”的なクサい言葉。
けど、このスーパームーンとやらを見て感じた。
夢ちゃんて……ホントは“月”だったんだね。
冷静で思慮深くて、どこか儚い雰囲気をまとってる。
人の気持ちにそっと寄り添えるから、
見せかけじゃない優しさを持ってて……
心に秘めた感情の部分は、誰よりキレイで唯一無二。
月だって、黄色じゃなくて白色だ。
お月様、どうかウチに帰るまでは……
雲に隠れないで、俺を見ていてくれますか?
心がぐちゃぐちゃで、なにもできない無様な俺を。
眼からポロッと溢れた、正気に戻った俺の気持ちを。
キミに知ってもらえないのは、なんか虚しいから。