第28章 兄と妹
“っっ、夢、夢、壊れちゃえ……!
壊れて俺だけのモノになれ……!夢っ……!”
蜂楽は、常軌を逸してた。
それは、私も同じだった。
このまま壊されても……いいと思った。
「恋愛なんぞアドバイスできる立場じゃねぇけど。
アイツの愛は間違ってる。あの“重さ”は、お前の心を縛り付ける足かせでしかねぇよ。」
蜂楽の足首にミサンガを縛った瞬間、私も感じた。
でもその頃とは比にならない、道の逸れた飛躍。
マスターは正しい。
私と蜂楽の“衝動性”は異常だった。
「……首絞め(アレ)は俺自身、受けた虐待だ。
だから手荒なコトしてでもって、体が勝手に動いちまった。」
そっか。
やっぱり“お兄ちゃん”は……優しいな。
痛みを解ってる人の言葉は、何よりもいい薬になる。
「このままだと、ウイルスみてぇに体を蝕むぞ。」
───解ってる。
でも……でも……
「……でも私、廻を……愛してるの……」
眼から勝手に伝う感情。
蜂楽が私に、思い出させてくれた感情(コト)。
喜び、怒り、哀しみ、楽しみ。
空っぽだった私の心を、蜂楽は満たしてくれた。
「……重症だな。」
ボソッと呟いて、マスターはコーヒーをすすった。
「……とりあえず、しばらくは学校休んで俺ん家いろ。首の鬱血すげぇし、自分ちにも帰れねぇだろ?」