第27章 噛みつかれた日 ✢
「アイツとはもうキスした?」
“このままこの人に、口付けてしまおう。”
私の中の“かいぶつ”が、非道徳にも言ったこと。
「もうセックスした?」
“このままこの人に、一夜を捧げてしまおう。”
この幻聴の原因は、マスターへの心変わりなの?
違う。
天地がひっくり返ってもありえない。
私が愛してるのは……廻だけ。
私が縛られてるのは……廻だけ。
首を横に振ると、蜂楽は言った。
「そんじゃ確かめるね。」
「……っ!?や、やだっ!!」
制服の胸元をブチッと引っ張られて、シャツのボタンが何個も弾け飛ぶ。
乱暴に開けたその隙間から、胸の谷間辺りをジュウッと強く吸われた。
気持ちよくなんか、ない。
去年の“トラウマ”と……何も変わらない。
「……酷い。
廻がいるのに、するわけ、ないでしょ……?」
溢れた涙が、また頬を伝う。
長く揃った前髪で隠されていた蜂楽の眼が、
髪の隙間からギラリと光って私を捉えた。
「……俺に口答えする気なんだね?」
どうして?
私のこと、信じてくれないの?