第4章 記憶
「どーする?夢ちゃん。」
蜂楽の少し高めの声で、ハッと我に返る。
「……観てみたい…かな。」
「いぇっさーほいさ♪」
お母さんの絵への興味から、行くと返事をしたものの。
千葉に戻る電車の中で少し気分が悪くなって、蜂楽の顔が上手く見られなかった。
蜂楽のお母さんの絵が観たい。
蜂楽のお母さんに会いたい。
複雑な心境になりながらも、その気持ちだけで歩を進めた。
「夢ちゃんだいじょーぶ?体調悪い?」
「……ごめん、大丈夫。」
「謝んなし♪無理しないで、今日はやめとく?」
「……ううん。絵、観たい……。」
最寄りの駅に着いてから、何分歩いただろう。
蜂楽の家とウチは割と近所って聞いていたけど、少し違うエリアに差し掛かっているような…。
「ここが俺ん家でーす!さぁさぁ入って休んで!よく歩けました♪」
なんか、ここ……
……全然ウチの近所じゃないんですけど。
「優、いま出かけてるみたい。」
「……そう。」
「多分買い物だろうからすぐ帰るよ。いま連絡しといた。帰って来るまで休んでて!」
「……うん。」
「お水持ってくるっ。」
「……ありがと。」
ひとまず蜂楽の部屋に案内されて、極彩色で彩られた空間に腰を下ろさせてもらった。
私の、シンプル通り越して殺風景な部屋とは大違い。
男子の部屋をあまり見回しすぎるのも気が咎めるし、めまいと吐き気で視界がボヤついてたけど。
独特な配色のファブリックは、自由な蜂楽の性格とマッチして良いなと思った。