第25章 渋みのミルクティー ✢
「……っっ!?」
声も息も、押し殺した。
玄関に立ちすくむ私と……
リビングで情事に及ぶ母と、知らない男の人。
それを隔てるのは、たった一枚のドアだけ。
なんで……?
なんで、お母さんが……?
よりによって、なんで私のお母さんが……?
不倫、なんて───。
「なぁ。娘はっ…?帰って、来たら…」
「あっ、こんな時にっ、夢の話…やめてっ…」
は……?
セックス中に、私の名前なんか……
出さないでよ。
「あー、そういや彼氏の家に転がり込んでるって…言ってた、なっ!」
「あぁんっ…!そこっ、だめぇ…!」
やめて、やめてよ。
私、聞いてるよ……?
私、ココにいるよ……?
「娘もっ、ヤりまくりってコトか。
親子揃って、しょーもねぇ淫乱なこって…!」
「んぁっ……!誰のせいでっ、こんなぁ……!」
あ…………ダメ…………。
気持ち悪い───。
犯罪の現場に出くわしたら、こんな気分なのかな。
なにか音を立てて気付かれれば、口封じに殺されてしまうんじゃないか。
そんな防衛本能。
生気が失せたままの眼で……
その場から逃げるしかなかった。