第1章 おねがい
いつもの昼休み。
お弁当を食べた後、足早に生徒会室に向かった。
放課後会議の資料準備がまだ残ってて、印刷したプリントを持ってガラッと引き戸を開けた。
それが、全ての始まりだった。
「……えっ……!?」
見慣れない男子が机に突っ伏して寝ていて、体が思わずビクッとなる。
男子は少し苦手だけど、仕方ない。
……なぜか、指しゃぶりまでしてるし。
インナーカラーの黄色が印象的なこの男子。
県内では中堅規模のうちの高校で、見たことがない人…
学年は違うってことだけは判った。
「あの!ちょっと…誰…。」
プリントを適当に置いて、声をかけてみる。
「あのー!ここで寝ないでください!」
細身に見えるその体。
肩を揺らしてると、がっしりした筋肉を感じた。
「……ほぇ……もう朝ぁ……?」
「いえ。昼休みの生徒会室です。」
「……むにゃぁ…せいとかい……?」
目の開かない顔を腕の隙間から覗かせる彼。
瞼を薄く開けると、少しずつ状況を理解し始める。
「ここで寝ないでくださいね。」
「……アンタ、誰ぇ……?」
「生徒会長の蜜浦 夢です。」
上体を起こすとまだ眠たそうに目を擦りながら、私を見て言った。
「おはよ。」