第24章 ラッキーカラー
テントに戻って入り口にふたりで並んで座って、
夕方が近付く海を眺めた。
「誕生日なのは俺っしょ?」
「廻の誕生日は、私にとって特別な日だから。」
隣にいる大切な人の手に、指を絡める。
上で結ばれた前髪で現れる、短い眉を久々に見た。
最近の余裕の無さでイライラしてて、こんな当たり前の愛おしさも忘れていたんだ。
「私と出会ってくれて、ありがとう。
私と一緒にいてくれて、ありがとう。
私を愛してくれて、ありがとう。」
その眉と、形の整った唇にキスをした。
暑い暑いこの日、あなたはこの世界に生まれ落ちた。
稀有なサッカーの才能を持ち、今なお高みを目指してる。
そんなあなたに、私はずっと魅せられていたい。
愛し愛され、依存し合って共生したい。
「生まれてきてくれてありがとう、廻。」
蜂楽は眼を丸くして、赤らんだ頬をポリポリ掻いた。
「俺の誕生日なのに、“ありがとう”言ってくれるの?」
「誕生日は、その人が生まれたことを感謝する日だよ。だから今日は、私が廻に感謝する日。」
並んだふくらはぎを寄せて、お互いのミサンガをくっつけた。
三角に立てた膝に頬を寄せて、蜂楽を斜め下から覗き込む。
「……生理が、遅れてるんだ。」
ナチュラルな空気の中、ナチュラルに出せた懸念。
ちょっとだけ驚いた顔をした蜂楽が、繋いだ手をキュッと握る。