第22章 一日一顔 ✢
「夢ちゃん。“廻物展”のことなんだけどね。」
夕飯後、キッチンで優さんに話し掛けられる。
食器を洗う私と、隣で片付ける優さん。
お母さんと並んで家事をすることが無かった私にとって、ちょっぴり嬉し恥ずかしい。
「私と一緒に大阪に来なよ!きっと学べることがたくさんある!
って、一週間もバイト休めるかな?」
優さんから言ってくれるなんて、嬉しすぎる…。
優さんは著名な画家さんだけど、ウチの両親みたいに立場の壁を全然感じさせない。
ひとりの人間として、私に接してくれる。
「あのっ、マスターに話してみます…!でも…良いんですか?私まだ、何もお役には…。」
「そんなことないよ。だって“廻物展”のロゴデザイン、夢ちゃんがするんだから!」
びっくりして、危うくお皿を落としそうになった。
自分には出来ない大胆な切り込み方をする優さんに、さすが蜂楽のお母さんだと実感する。
「とっても嬉しいですけど、未経験の私に出来ますかね…?」
「だいじょーぶ!私もしっかりチェック入れるし。とりあえず好きなように、やるだけやってみなよ!
ギャラリーにも言ったんだ。私サイドに有望なデザイナーの卵がいます、ってね!」
にっこり微笑む優さんを見て、心臓が速まる。
また新しく一歩踏み出すきっかけを貰って、昂って…顔に熱が集まってくる。
「販促物…フライヤーやポスターに使われるよ。
締め切りまで短いんだけどさ。」
優さんの表情豊かな“かいぶつ”の絵。
生かすことも、潰すことも……
きっと、私のデザインに左右される。