第22章 一日一顔 ✢
「廻はいつから部活復帰するの?」
「んー。謹慎はもう解けたけど。夏休み中は気まぐれ参加しようかな、って。通常運転は二学期から♪」
その日、夕飯を食べながら優さんは蜂楽に聞いた。
蜂楽の“蝉川退治”から、もう一ヶ月。
早いな、と感じる。
志望校の願書を出す日は、少しずつ確実に近付く。
「夢ちゃんは?バイト、いつから行くの?」
「明日からです。でも不思議なんですよね。まだ私、名前も聞かれてなくて。」
「採用したなら普通は聞くよね?」
「電話番号だけでした、聞かれたの。」
「へぇー?ご近所さんにも聞いたけど、そのマスターって不思議な人みたいよ。ケーキやコーヒーは評判良いみたい。」
履歴書も特にいらない、って言われたし。
バイトすること自体が初めてだけど、少し怪しげ。
「ねぇ、夢ちゃん。コレとっても美味しい!
廻の言う通りだったね!お料理が上手!」
「それな。マジでおいしーよ夢ちゃんの手料理♪これからは毎日食べれるんだね!早く俺んトコにお嫁においで♡」
ふたりの喜んでくれる顔は……
ひとりぼっちのご飯を余儀なくされた寂しさから、私を救ってくれる。
これからは毎日……一緒なんだ。
好きな人と一緒に食べるって、本当に美味しい。
「……あははっ!嬉しい!」
手料理を褒められて、前は素直に言えなかった言葉。
笑顔と一緒に、自然と溢れた。