第22章 一日一顔 ✢
「やってみない?初仕事!」
優さんの絵がどんなに素晴らしくても
私が半端な仕事をしてしまえば……
それが台無しになってしまう可能性だってある。
「ありがとうございます!是非やらせてください!」
それでも私は、それを学びにココに来た。
やるだけのことは、やってみよう。
優さんは本当に本当に……優しくて素敵な人だ。
部屋に戻って、家から持ってきたクロッキー帳を広げる。
“廻物展”ロゴの案を、いくつか考えてみた。
まだまだ形になんて全然ならない。
ありきたりだし、美術の授業レベルで絵の基礎も習得してない私がいきなり出来るはずもなく。
でも、新しい道標(デザイン)を創造するコト。
こんなに楽しいコトって、他にない。
『みてー、おかあさん。いっぱいおえかきしたのー。かわいいドレスきたおんなのこと、かっこいいズボンはいたおんなのこと、それから…』
『あら、上手じゃない夢!お洋服考えるのが好きなの?』
『うん!だいすき!』
『そういうお仕事する人を、デザイナーって言うのよ。』
『でざいなーかぁ。かっこいい!』
『でもあなたはお医者さんになりなさい?
お父さんとお母さんみたいな。』
『はーい。』
保育園児の頃だった。
“デザイナー”という言葉を初めて知った。
母にたった一度だけ絵を褒められたこの時。
それを真に受けて……
何年経ってもずっとそれが……嬉しかった。