第21章 父と母
「こんちは夢ちゃんママ!夢ちゃんそっくりな美人さんすね♪けっこー若いし。」
「コラ、廻っ…!」
さすがの優さんも困り顔だ。
「ふふっ、ありがとう。でもそっくりなのは私じゃなくて夢のほう、でしょ?」
「にゃっはい♪それ!!」
見るからに噛み合わないふたりが喋ってるのが、不思議な感じ。
「俺、夢ちゃんとめちゃめちゃ仲良しなんだ♪だから夢ちゃんママに会えて嬉しい!」
「あらぁ。私こそ嬉しい!あなたみたいな可愛いお友達に会えて!」
お母さんの、よそ行きの笑顔。
最後に見たのは、中学入るくらいの時だったかな。
久しぶりに見た、私の苦手な顔。
この顔を演じた後、必ず家で機嫌が悪くなるから。
「夢とはどうしてお友達になったの?」
「俺が生徒会室で昼寝してたら起こしてくれたんだ。今では大切な友達♪」
あ……“彼氏”って……名乗らないんだ。
自分自身、説明のつかない感情だ。
安心の中に、ごくごく微量の寂しさが混じる。
「蜜浦さん、立ち話もなんですから。良かったらホント上がりません?
これから夢ちゃんが、過ごす家ですし…。」
改めて誘ってくれる優さんだけど……
「ごめんなさい。せっかくですけど、そろそろ病院に戻らないと。
本当に夢のこと、よろしくお願いします。」
そう言うと……思ってた。
点灯させたスマートウォッチを見ながら言う母に、嫌気が差した。