第21章 父と母
「住所、この辺よね?」
「えっとー、あー、うん。そこの交差点、えっと…左、だったかな?」
「えぇ!?それじゃグルグルしちゃう!!」
「ま、待って。スマホで調べてみる…!」
「行ったことないの…?」
母の車で蜂楽の家に向かいながら、道が判らないフリをして時間稼ぎをしてみるけど。
蜂楽に送った
『今から行く!!女装しといて!!』
『女装しといてね!?』
『お願いだから、女装しててね!?』
の無茶振り連投に、既読はまだ付かない。
文化祭から一週間経った休日の今日。
夏休みはすぐそこだ。
部活謹慎中の蜂楽は、どこかに遊びに行ってるのかもしれないけど。
この土曜日は予定があるからと、両親との時間を取った私にシュンとしていた蜂楽。
家にいる可能性だって、全然ある。
そして私が訪問すれば、すっ飛んでくると思う…。
「あ!ココ?絵を描く…キャンバス?だっけ。ガレージに置いてある。」
「ああーっ、う、うん!ココだね、うんうん…。」
頼む……蜂楽ぁ……!!