第21章 父と母
「まさか去年のアイツじゃないだろうな?」
「っ、違う!あの人じゃない…!尾けられた時、
違う所にいたらしいから…!」
慌てて大きい声が出てしまう。
父や母の口から、蝉川の話を……もう聞きたくない。
「怖いから、友達と一緒に登下校してもらってる。犯人に心当たりもない、です…。」
“あの人”の話で、動悸がする。
蜂楽のことは“友達”ということにするしかない。
蝉川とのことで、男子関係には敏感だから。
「なら、平気なんじゃない?」
お母さんは私のこと、あまり心配してないのかな?
もっと強引で、他者を支配したいタイプなのに。
蝉川の時のゴムの件も、母が言いだしたことだ。
私が好きな、ボーイッシュでカジュアルな服装を嫌ってるのに……
いま着ている肩開きのトップスをスルーしてる。
今まで、勝手に清楚系の服を買ってクローゼットに入れられてた程だったのに。
私にもう……興味も無いのかな。
「その友達の家は△△町で…いつも遠回りして送ってくれる。でも、一緒に帰る時は尾行の気配、感じなくて…。」
これが不思議なんだ。
やっぱり“ニセ彼氏”効果が十分すぎるほど発揮されているってことなのかな。
男子が隣にいるだけで、犯人に警戒されている?