第19章 お守りみっつ
「お守り、ひとつめ。」
蜂楽は右足首で、向かい合った私の左足首にチョンと触る。
触れ合ったミサンガを結んだ足首に、全神経が向いてしまう。
「俺に背中向けて?」
フルーツの袋を、適当な机に置いた蜂楽が言った。
「?」
理由も解らず背中を向けると、蜂楽はそのまま手ぐしで私の髪を整え始める。
「えっ、え?なに?」
「お守り、ふたつめ。」
少しぎこちない手つきで、髪の束をねじる。
昼間取られてしまったあのアレンジをしてるって…すぐに判った。
「え、そのゴム、どうしたの?それにやり方…」
「クラスのテキトーな女子に貰った。やり方も教わった。」
もしかしてその女子の髪で練習とかしたんじゃ…
って、すぐネガティブに入る癖が嫌。
一瞬、ちょっぴり複雑になる。
でも、蜂楽に髪を触られるのは……
慣れてるのか慣れてないかも解らないけど……
ドキドキする。
「ちゃんとふんわりさせたよ。ゴムも隠したし、後れ毛も出した。」
真剣に教わったんだって、些細な所から伝わる。
私が蜂楽にしてあげて、蜂楽が私にしてくれた。
お揃いの髪型が……元通りになる。
私が勝手に祈ってた、このふたつの“お守り”。
同じモノ、同じ感じ方してたんだ……私達。