第19章 お守りみっつ
パイナップルが何個か入った袋を口に咥えたまま喋り、手にはイチゴの袋を持つ。
「……あ、りがと……」
唇に当てられたイチゴをそのままパクリ。
凍ってて、冷たい。
凍ったものをめったに食べない私にとって、この多忙と暑さの中でやっと辿り着けたオアシスみたいだ。
蜂楽はパイナップルの袋を手へ持ち替えて、イチゴをまたひとつ摘む。
「もいっこ。あーんして。」
「み、みんな見てるから…。」
「いーじゃんそんなの。あーん。」
いやに色気ある声と顔で迫る蜂楽。
なんだか一皮むけて大人になったような雰囲気なのに、言ってることは子供のまま。
「……っ」
根負けしてしまって、素直に口を開く。
「……おいし。」
蜂楽のクラスはフローズンフルーツだから、自分のところの模擬店のものみたい。
同じ本部テント内にいる生徒会メンバー、特に蝶野くんからの視線が……痛い。
「何しに来た。部外者は本部(ココ)に入るな。」
「は?俺、カラオケ参加者なんですけど。順番待ちしちゃってごめんあそばせ♪」
蝶野くんと蜂楽は、またバチバチする。
「イチゴ持って行くって、約束したでしょ?」
瞼を少し閉じて、影がある眼で私を見下ろす蜂楽。
何もかも見透かしてるような気配を孕んでる。
昼間のこともあるし……
ケンカみたいなこの空気も、思えば初めてで……
緊張する。