第3章 ともだちデート
『私、原宿行ってみたい!』
『いいね!いいね!んなら原宿行こっか♪』
『私、行ったことないんだ。蜂楽はある?』
『あるよん♪楽しいこといっぱいあるから、情報送っとくね!なにしたいか考えといて♪』
スマホの文字のやりとりでも蜂楽は明るい。
勉強の合間の息抜きになった。
一階で玄関ドアの音がして、お父さんかお母さんのどちらかが帰ってきた気配がする。
テレビの音、食器の音、足音、ドアの開閉音。
生活音だけで、声はしない。
“ただいま”も、無い。
父も母も、産婦人科医だ。
だから昼夜問わず、お産による急な呼び出しに生活を支配されている。
プライベートとの両立が難しいから、若い人がやりたがらず育たず、そのせいで当直が多く激務。
父に至っては、県議会議員までやっているから家にいること自体レア。
よくある地元の有力者ってやつだ。
私はそんな両親の“子供(サラブレッド)”なわけで。
仕事が大変なのは昔から理解していて…
妊婦さんや悩みを抱える女性達を日々助けている。
そんな両親を尊敬…
……これじゃあ中身の無い、小学生の作文だ。