第17章 独占欲
月曜日の学校は、蝉川の話で持ちきりだった。
蝉川に脅されて、今まで被害者だと名乗り出られなかった女子やその友人。
蝉川の悪癖を知らず、騙されていたと感じた男子。
その人達から噂は広まり、“蝉川退治”をひとりで成し遂げた蜂楽は、急激に英雄視しされ始めた。
『蜂楽くーん!バイバーイ!やば、超かわいー♡』
『会長と付き合ってるんだよねぇ。ざんねーん。』
『お前って寝てばっかりで喋ったことなかったけど、実はすげーのな!見直したわ!』
『ウチの友達もあのゲス男に脅されてたの!本当にありがとね!』
『蜂楽お前、女子の視線持ってくなよー!一日にして学校のヒーローかよっ♪』
毎日一緒に登下校すると、学年問わず男女問わず、周りの人達の声が一気に聞こえた。
誰に対しても壁を作らない蜂楽だから、周りも盛り上がっていった。
蝉川が二ヶ月の停学処分になったと聞いたのは、
しばらくしてからだ。
学校側にレイプ被害を訴えた、何人かの女子の証言を受けての結果らしい。
父の県議という立場上、私は学校に訴えなかった。
同時に蝉川の裏アカの存在も問題になり、例の投稿とアカウントは無事に削除された。
『彼氏クン、最近モテモテだねー。』
『蜜浦さんとじゃ凸凹カップルかと思ったけど、案外お似合いじゃね?』
『毎日一緒に登下校でしょ?ラブラブでいいなぁ。』
私もクラスの人に、やたらと同じことを言われる。
あの投稿で私達の“交際話”が明るみになった時、蜂楽に皮肉を言ってた人達も、今や手のひら返しだ。