第17章 独占欲
蜂楽が私を蝉川の呪縛から解き放ってくれたのは、紛れもなく、なくてはならないとても大きな一歩だ。
なのに……このモヤモヤは何?
蜂楽が皆から“すごいね”って認められるのは……
良いこと、だよね?
「俺の処分。一ヶ月の部活参加禁止。そんだけ♪」
昼休み、遅れて生徒会室にやってきた蜂楽が言った。
「停学じゃなくてほっとしたよ…。もしかして蝉川の悪事を暴いたから、少し軽くしてくれたのかな。」
「うっひょい、ラッキー♪」
「でもしばらくチームでサッカーできないね。
私のせいで…本当ごめんね。」
学校側としても、蜂楽に感謝してる部分がある、
ってことかな。
蜂楽はそれだけ、すごいことをしたんだな。
やっぱり……良いことじゃん。
何にモヤモヤしてんの……私は。
「なーに言ってんの。これは俺のためでもあったんだってば。
俺は夢ちゃんなしじゃ生きてけないって、言ったでしょ?」
至近距離に顔を近付けられて……
静かに喋る、優しくて丸い声。
ごく自然に重ねてくる唇。
心の温かさが伝わる、ふんわりなキス。
「……もっと俺のコト、信じてよ。」
黄色い眼に、私が映る。
“夢ちゃんのコト、信じてるからだよ。”
蝉川との関係を知られてしまった夜、蜂楽は私にそう言ってくれた。
───そうだよね。
私が蜂楽を、一番信じてるんだから。
「信じてるよ、廻。大好き。」
心配することも、モヤモヤすることも……
なにもない───。