第16章 依存の入口
「……私、恋愛に依存するタイプだと思う。
廻のサッカー人生を、いつか邪魔しそうで…怖い。」
自分のスニーカーのつま先に視線を落とした。
“依存”には……苦い記憶がある。
蝉川との一件で感じていた。
育った家庭環境や親の愛情不足、それだけのせいにしてはいけないけど。
きっとそれも原因のひとつで……
いわゆる私は、“重い女”だ。
「なに言ってんのさ?夢ちゃん。」
リフティングを継続している蜂楽を、顔を上げて見る。
「夢ちゃんは俺のサッカー人生に、絶対絶対必要だよ?」
梅雨の中休み。
30度近い気温の中、太陽が照り付ける。
蜂楽の白いTシャツは、綺麗な肌を更に際立たせて…
黄色い眼は太陽光を受けて、キラキラしていた。
「夢ちゃんがいるから、俺は安心して思いっきりサッカーできる。学校も行けてるし、楽しく生きられてる。」
脚だけに留まらず、頭や首の後ろ、背中でも。
簡単そうにやってのけるのに、生き物のようにボールを操る繊細なテクニックに、改めて心が動く。
「夢ちゃんが俺の人生をもっと楽しく、もっと幸せに変えてくれたんじゃん。
初めて声掛けてくれた時のコト。俺、絶対に忘れない。」
私だって、忘れないよ。
あの、はちゃめちゃな出会いは。
思い出すと…胸が何かにキュッと掴まれる。