第16章 依存の入口
「じゃあ……サッカーやろ?」
癖のある襟足に指を通しながら、なだめるように頭をよしよしと撫でた。
「いいね♪」
今の今まで色気ムンムンだった蜂楽は、一瞬でいなくなった。
ジャンプして立ち上がりボールを持って、一目散に玄関へと駆けていった。
「どったの?急に夢ちゃんからサッカーなんて♪」
庭に出て、私に軽いパスを出しながら蜂楽が聞く。
「パスすら上手くできないけど。たまに思うんだ。
私が男子なら、廻のサッカーの“ともだち”になれたかもしれないのに、って。」
ぎこちないキックで蜂楽にボールを返す。
「すごく羨ましく思うの。
いつか廻の、“ともだち”になる誰かが。」
蜂楽は私に優しくパスを返した。
この優しいボールにだって、“女子相手”って気遣いが含まれてる。
「廻に本当の“ともだち”できたら、今よりもっとサッカーに夢中になる。
彼女なんて…煩わしいって思うかもしれない。」
私がまた返したボールをヒョイとつま先で拾って、蜂楽はリフティングを始めた。
10回や20回なんて、あっという間。
まだまだ落とす気配はない。
「廻はプロになれるプレーヤーだよ。
廻のサッカー人生に“ともだち”は必要だけど、恋人は要らなくなる日が来るかもしれない。」
こっちから誘っておいて、どんどんネガティブな方へ落ちていく。
勉強の気晴らしで始めたサッカーだったのに、
実は、蜂楽の気を引くためのサッカーだったのかと思えてくる。
自分の弱さが、露呈する。