第16章 依存の入口
「ねぇねぇ夢ちゃーん。勉強やる気出るように、なんか可愛い髪にして?」
「どゆこと?」
テスト勉強中、謎のおねだりが始まる。
「あ、見て。編み込み可愛い。」
「マジだ!俺かわいい♪さすが夢ちゃん!おめかしデートの時にまたやって♡」
インナーカラーの黄色を編み込みにしてあげる。
本当に可愛くて、私が集中できなくなりそう。
「そろそろ休憩する?お菓子持ってきた。」
「いえーい、おかし♪あ、ポッチーあるポッチー!
さては夢ちゃん、俺とイチャつくために♡」
「ポッチー=キスじゃないからね?」
突っ込まないと会話は成り立たない。
けど試してみたい自分もいて、必死で誘惑を振りほどく。
「廻は今、何やってるの?現文?」
「んぇ?たぶん。ながーい文章読みたくなーい。これゼッタイ寝るために読むやつじゃん?」
「じゃあ私が文章だけ読んであげる。ちゃんとよく聞いて、問題に答えるんだよ?」
「マジか!夢ちゃん優しすぎて神♡」
現文の問題文を読んであげている間、テーブルに頬を付けたまま、じっと私を見上げる蜂楽。
穴の空きそうなほど見つめられて、緊張する。
蜂楽を甘やかしているのは解ってる。
けどこれは、必要な甘やかしなんだ。
何がきっかけでもいいから、少しでも勉強やる気になってくれればいいな。
サッカー好き!勉強嫌い!で、いいけど……。
留年しても困っちゃうし。
サッカーで手助けできない分、私のできることで支えてあげられたら、って。