第15章 おそろい ✢R15
「今更だけどさぁ。夢ちゃんって、野球かソフトでもやってたの?
でなきゃ女の子って、バッセン来たがらないよね?」
一巡目のピッチングマシーンの投球、ラスト一球が放たれる時。
フェンス越しに、蜂楽は私に聞いてきた。
「中学の頃、野球部のマネージャーやってただけだ、よっ!」
答えながら打った打球は、今日イチに飛距離を伸ばした。
「ふぁー!!ナイショー!!」
「オッサンのゴルフか。」
中学の時はたまに来たこのバッセン。
高校に入って2年過ぎ、蜂楽と神宮のバッセンに行くまで、バッティングは過去に置き忘れたものだった。
「さぞモテたんでしょ?男だらけの中、女子マネなんてさ。」
フェンスの向こう側の顔が、むくれている。
「アニメの観すぎ。一個下にもうひとり女子マネいたし。その子は可愛くて器用でモテたけど。」
バットを返却してフェンスの扉を出た。
首筋に刻まれた愛の印を多少隠せるようにと、初夏にもかかわらずフードの立ったパーカーを着てきたからとても暑い。
腕まくりしてから、蜂楽に近付いた。
自分の髪を束ねるのに使ったヘアゴムを取って。
背伸びして、へそ曲がりのパッツン前髪をパイナップル型に結んだ。