第15章 おそろい ✢
朝は白米だと力説する蜂楽のために、味噌汁と卵焼きと焼き鮭を用意した。
ご飯の準備中も、寝起きの発情で達してしまった熱がまだ体に残っている。
「夢ちゃんがいる朝。新婚夫婦みたい♡」
ニコニコしながら朝ご飯を食べて言う蜂楽を尻目に、私は顔が赤くなるのを感じながら、蜂蜜コーヒーを飲んだ。
「美味しいご飯、ごちそうさまでした♪
今日は何して遊ぶ?」
食器を片付けついでに近付いてきて、私が持っていたマグカップを自分のものにする蜂楽。
今の今まで口を付けていた部分にこれ見よがしに間接キスして、蜂蜜コーヒーをすする。
さっきの“新婚夫婦みたい”というワードにドキドキしてるのは、私だけなのかな…?
顔の火照りが、なかなか抜けない。
「じゃあ…またバッセン付き合って?今日は近場の、前に行ってたとこ。」
「なんなりと♡お姫様。」
「廻は何したい?」
私を見て数秒黙った後に、蜂楽は言った。
「俺は夢ちゃんとお揃いのモノが欲しい。
服でもアクセサリーでも、なんでもいい。」
思いもしなかった提案に驚いて、心が浮き立つ。
あっけらかんとした真顔で言う蜂楽が可愛い。
前から決めていたかのように涼しい口調。
こういうのって……女子側から言うものでは。
奪われたマグカップを持つ蜂楽の手を両手で包み込んで、綺麗な骨張った指にそっとキスした。
「嬉しい。探しに行こ!」
「うん♪」
本当に付き合ってるみたいだ。
実際、周りにはそう思われてるけど。
これでも“ニセモノの恋人関係”だということは……
ふたりだけの秘密。