第13章 もう泣かない。
「……っ、嬉しい時には、泣けばいいじゃん…。」
「……泣かない。男だから。」
そのまま瞼をゆっくり閉じながら、唇にキスされる。
今までの傷を癒してくれるような…
慈しみのこもった“治療”のキス。
ディープじゃないけど、唇を上へ上へと重ねてくる。
新しく唇に食まれる度に柔らかい心地良さが重なっていき、幸福なホルモンで脳が満たされる。
蝉川と私が生み出した“トラウマの鎖”が…
ジャラジャラと音を立てて、壊れていく───。
「女の子を守るのが、男の役目でしょ?」
耳元で低く、囁かれる。
これ、本当に弱いから…。
「俺、夢ちゃんのコト、信じて待ってるから。」
廻はいつも……
そのままの私を受け入れてくれるね。
「本当の恋人同士になれるまで…夢ちゃんのコト、待ってる。」
ありがとう。
廻も、そう思ってくれてるんだ。
なら私も、“鉄の首輪”を全部壊すまで……
「だからまだ、“ニセ彼氏”…クビにしない?」
廻との世界を、一緒に生きていくよ───。
「……“契約更新”です。“ニセ彼氏”くん。」
これからもよろしくね……廻。
契約書の判子代わりに、キスを返した。