第13章 もう泣かない。
蝉川と私の話を聞いた時、辛かったよね?
私がバイバイしようとした時、悲しかったよね?
蜂楽は何も悪くないのに……
散々振り回して、また傷付けた。
「夢ちゃんは、俺を蝉川から守ろうとしてくれたんでしょ?だから、バイバイしようとしたんでしょ?」
蜂楽の大きくて温かい手に、頭を優しく撫でられる。
「もう俺のために、強くいようとしなくていいんだよ。」
目から流れ出す涙が止まらない。
蜂楽からの言葉が乾いた心に染みる、嬉し涙。
同時に、自分への怒りが悔し涙となって入り混じる。
「うっ……ぁ、たしって、ひぅっ、最悪っ、だね…」
すぐ泣いちゃうのは、あなたじゃなくて私の方。
「何度も廻を、傷付けてっ……自分より、大切な人、なのにっ……うぅっ……。」
「夢ちゃん……」
子供なのは、私の方だね。
感情のコントロールが、まるでできる気がしないや。
自分の顔が涙でグシャグシャなのは判ってたけど、
私を呼んだ大好きな人の顔が見たくて視線を上げた。
蜂楽は、泣きそうな顔だった。
涙を必死で堪えた、苦悩の表情。
合宿前と、同じ。
「俺、夢ちゃんの前ではもう泣かないって、決めたんだ。」
蜂楽は顔を俯かせて、潤んだ眼を前髪で隠した。
「泣きたいくらい悲しいのは……夢ちゃんのほうだから。」