第13章 もう泣かない
「夢ちゃんのコト、信じてるからだよ。」
顔に胸筋のついた胸を押し付けられて
蜂楽の心臓が速い鼓動を刻むのがよく判る。
聞き慣れたいつもの、丸みを帯びた優しい声。
ヒーリング効果があるみたいに、温かい。
少しずつ体の震えが落ち着いてきて……
安心する。
まるで、たっぷりの愛情に包まれて抱っこされてる子供みたいに……
ポカポカの気持ちになれる。
お父さんやお母さんは……
どうして、こうしてくれなかったんだろう?
「蝉川を1on1で潰して、そのあと股間も潰した。
SNSの投稿アイツだった。ギャラリーの前で辱めたから、もう来れないっしょ。
そんで監督に怒られたから、合宿出ないで帰ってきた。」
「バカ…暴力沙汰で処分されたら…どーすんの。」
「そんなの、俺は1ミリも怖くない。」
私のために、蝉川に挑んでくれたんだ。
こんなに泥だらけになるまで戦ってくれて……
私のために……ごめんね。
「俺が一番怖いのは……
夢ちゃんを失うことだから。」
“もう止めよっか。‘恋人ゴッコ’。”
自分で言い放った言葉を心から悔やんだ。
私だって、蜂楽を失うことが怖い。
私だって、本当はこのままずっと……
そばにいたいよ、廻。