第13章 もう泣かない
「それより、怖かったね。俺がいるからもうだいじょーぶだよ。」
玄関で立ったまま、ギュッと抱き締められる。
「夢ちゃんになんもなくて、ホント良かった。」
安心するのに、罪悪感。
嬉しいのに、手放しで喜ぶのは許されない気がする。
「……遅かったね、帰り。」
「今日、生徒会の会議。文化祭…近いから。」
「にゃるほどね。にしてもストーカー、マジで蝉川じゃなかったんだ。アイツ確実いま学校だから安心してたよ。」
「え……どうして“あの人”のこと……」
……ウソ。
どうして、蝉川と私の関連に辿り着いて……
「蝉川(アイツ)俺にドヤってきたんだ。
夢ちゃんとあったこと、ペラペラ喋ってきた。」
───全身から血が引いていくのが判った。
好きな人には、蜂楽には……
知られたくなかったこと───。
「ぁ……あ……蜂、楽……ごめん、なさい……」
体が……震える。
脚が……ガクガクする。
私……嫌われちゃう……!
「辛かったね。」
私の後頭部を押さえて、更に強く抱き締める蜂楽。
なんで?
なんで、こんなに最低な私を……
まだ、庇ってくれるの?
「なん、で……私っ、のこと、そこまでっ……!」
大粒の涙が、自然に溢れ出す。
「ごめんね夢ちゃん。
守ってあげられなくて……ごめんね。」
蜂楽はなにひとつ、悪くないでしょ……?
「うっ……なんでっ、謝るのぉ……。
優しく、するのっ……!」
過去の私が……愚かだったんだよ?
あんなヤツ好きだったばっかりに。
あんなヤツと自分を、最後まで信じたばっかりに。