第13章 もう泣かない
「……っっ!!」
「うぃ!?」
怖くて怖くて、声も出せず蜂楽に抱きついた。
「だ!誰かに尾けられて…!!」
「マジか!?はやく!鍵開けて!」
リュックのポケットからなんとか鍵を見つけ出すも、手が震えて鍵穴に上手く挿せない。
「だいじょーぶだよ。俺がいる。」
冷たく震える私の手を、丸ごと包んでくれる大きくて温かい手。
蜂楽……私はなんて、卑怯なんだろうね。
自分勝手に突き放しておきながら……
今、あなたがいることに死ぬほど安心してる。
逃げてる時に、心であなたを呼んでいた私を
……許してはくれないよね?
「はぁっ、はぁ…!」
玄関の中に入って、しっかりと施錠をした。
尾けてたのは、蝉川じゃなかった。
なら一体……誰なの……?
「ヤバいね。もう警察案件じゃん…。」
「それは……お父さんに、聞いてみないと。
でも、忙しい……だろうし。」
「仕事忙しくてもさ、メッセくらい読んでくれるっしょ?」
「……そう、だよね。さすがに、言ってみる、かな。」
蝉川との一件でも同じだったけど、私は親に何かを相談するということに抵抗があるみたいだ。
蜂楽と帰るようになって尾行の気配は感じなくなったから、このまま終息すると思っていた矢先だったし。
蝉川が犯人だと勝手に思い込んでいた予想が外れて、未知数の恐怖が襲ってる。
なのに、親に相談するのを躊躇う。
ウチはそんな親子関係だ。