第2章 帰り道の約束
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生徒会がない日は図書室で勉強して、蜂楽の部活が終わるまで待つことになった。
図書室が閉まる時間になるまでは図書室で、
閉まったら玄関前の木の下で待ってて、と言われた。
連絡先を教え合えば早いんだろうけど。
蜂楽は初日、そういう話はしなかった。
きっと彼なりに“ニセ彼氏”であることに気を遣ってくれてるんだと思う。
「あのさ、夢ちゃん♪なんで俺と毎日帰りたいの?」
ウキウキなテンションで、蜂楽は聞く。
恋人のフリを頼んだ以上、理由を隠しているわけにはいかない。
楽しそうな彼に水を差すような、重たい話を。
「……最近、帰り道が、怖いの。」
繋いだ蜂楽の手を、少しキュッと握った。
「誰かに……尾けられてるような気がして……」
蜂楽も私の手を、少し強く握り返した。
「マジか。ストーカーってやつ?」
「判らない。気のせいだと良いんだけど…。」
「親とかに相談した?なんなら交番行く?」
「証拠ないし。それに親はふたりとも医者で…かなり忙しいから…。」
「なんそれ。言ってる場合じゃないっしょ?娘の一大事かもしれんのに。」
「医者であり県議会議員なの、うちの父親。だからあまり…大事に、したくない。
……ごめんね!怖いからって蜂楽くん利用して。
嫌だったら今からでも断ってくれて大丈夫だから!今まで何でもひとりだったし…!」
不安から多弁になっているのが判った。
蜂楽と繋いだ手に、汗を掻いてきている。
申し訳なさと恥ずかしさで、パッと手を離してしまった。
「……蜂楽くん?」
蜂楽は私を見つめて、その場で立ち止まった。