第12章 かいぶつ【蜂楽視点】
サッカー部に入りたての頃、俺は…
俺とサッカーをしてくれる“ともだち”を、いつも探してた。
人のプレーは、穴の空くほど見た。
俺の“ともだち”になってくれるヤツはいないかな?って。
だから、このチームのプレイヤーなら強みも弱みも…
俺は熟知してんだよ?
“サッカーしてる時の廻は、自由で素敵だよ。すっごくすっごく、かっこいい。
好きになっちゃうくらいに。”
夢ちゃん、ありがとね。
夢ちゃんはどんな時も、俺を元気にしてくれる。
俺は今日も……サッカーするのが楽しいよ。
✢✢✢
「はぁ……はっ……」
「ありゃ、もう終わり?ヤリチン先輩。」
スコアボードは8-2。
骨が無さすぎて、話にならない。
ヘバッて地面に大の字に寝そべる蝉川の目の前に立った。
でも今日の俺は、いつもと違う。
お前みたいなクソザコに……
1on1で勝ったくらいじゃ、俺は満足しないんだよ?
さぁ出てこい、“かいぶつ”。
蝉川(このクズ)を……再起不能にするから。
「こんな粗末なモン…切って捨てちゃおっか?
あってもロクなコトに使わないんだしさぁ?」
目の前に寝そべる股間を、スパイクで思いっきり踏みつける。
「ーーーーっっ!?」
声にならない痛みの表情が、俺の“かいぶつ”に活力を与える。