第12章 かいぶつ【蜂楽視点】
「蜂楽ぁ!足止まってんぞ!!」
「……さーせーん。」
俺が夢ちゃんのコトで頭がいっぱいの間も、合宿のメニューは進んでいく。
走り込みも基礎練も、今のゲームも……
集中力欠いて、いつも以上に怒られてる。
「蜂楽ぁ、ちゃんとやれよ!!試合もテメーのせいで負けたんだろが!!いつも足引っ張りやがって!!」
また、蝉川。
あの試合から何日かぶりのコイツ、マジウザい。
先月からやたら俺に突っかかってくる。
サッカーやる時くらい、ピアス外してこいっつの。
この合宿で完全引退……早く消えろよ。
「そういやお前、堅物会長の彼女チャンとはヨロシクヤッちゃってるわけ?SNS見たぜー。」
「あ?」
いま夢ちゃんのコト言われると、
俺は冷静でいられる自信がない。
「お前の首のそれ。キスマだろ?」
蝉川がゲスな笑い顔で言った。
あの日、夢ちゃんがつけてくれたキスマ。
夢ちゃんのモノって認められたみたいで、めちゃめちゃ嬉しかった。
俺もさっき勢いでつけちゃったけど……
夢ちゃんはあんな俺、きっと好きじゃない。
「だったら何?そのチャラついたピアス引きちぎろうか?俺が誰と何しよーが、アンタにはカンケーないでしょ?」
「はっ!カンケーあんだよそれが。せっかく先輩様がイイコト教えてあげよーってのに。」
なにコイツ、酒でも飲んでんの?って思ったら。
次の瞬間、俺は凍りついた。
「蜜浦 夢の処女奪ったの、俺なんだよねぇ♪」
───嘘だ。