第11章 ビター ✢R18
「なに……言ってんの?夢ちゃん…。」
午後の授業が終わってから、私は蜂楽をひとけの無い校舎裏に呼び出した。
ジャージ姿でやってきた蜂楽は、私の言葉に唖然としていた。
「……だから。これ以上、恋人のフリする必要ないでしょ。尾けられてる気配もなくなったし。」
───廻……ごめんね。
でも私にはもう、こうするしかないよ。
廻のこと、本気で好きになっちゃったから。
廻のこと、自分よりも何よりも大切だから。
もうこれ以上、一緒にはいられない───。
「自分勝手で悪いとは思ってる。感謝もすごくしてる。今まで恋人のフリしてくれて、ありがとう。」
「……なんの冗談?全っ然、笑えないんだけど。」
梅雨空が、今にも泣きそうだった。
「……俺のコト、大好きって…言ってたじゃん。」
蜂楽の表情から、温度が消えた。
「……勝手に俺達のコト、終わらせないでよ。」
瞳孔の開いた黄色い眼が、私を捕らえた。
「っ!?」
その眼に恐怖を感じた直後、突然唇に噛みつかれる。
背中が校舎の外壁に強く押し付けられて、蜂楽の体で挟まれる。
力で敵うはずもなく、逃げ場は無い。
歯を立てて、荒々しく角度を変えて…
唇を激しく貪られる。
蝉川にされた乱暴なキスと……記憶が重なる。