第11章 ビター ✢
前日眠れなかったせいで、金曜日は朝から頭痛と吐き気がした。
昼休みに生徒会室でお昼を食べながら、
“夢ちゃんのお陰で俺、学校楽しくなった♪”
と笑顔で話す蜂楽に、何も言えなかった。
午後の授業中、窓からぼんやり見た梅雨空がぐずついていた。
泣きそうな曇天を見ていると、蜂楽の涙を思い出す。
「(蜂楽って、よく泣くよなぁ…。)」
最初の涙は、過呼吸になった私を心配してくれて。
数日前は、ひとりぼっちの寂しさへの恐怖から橋の下で泣いてた。
それから熱が出た私をお見舞いにきてくれて……
お互いの気持ちを確かめ合えた時、滲んだ嬉し涙。
きっと、私がこれを伝えたら……
蜂楽はまた泣いてしまう。
好きな人の悲しい涙は、もう見たくない。
でも、これ以上私に関わらせていたら……
もっともっと沢山の、悲しい涙を見ることになるかもしれない。
私が、蝉川から蜂楽を守らなきゃ。
蜂楽みたいに、私も強くならなきゃ───。
『合宿の前に少し会える?話したいことがあるの。』
私は蜂楽のスマホにメッセージを送った。